Caught by …

 冬の冷たい風は逃げ続ける私を責めるように吹いていた。

 今の私は、駄々をこねて喚き散らし、それでも自分の思うようにいかなくて、親を納得させるほどの言葉も見つからなくて、現実から目を背けているだけの子供だ。

 だけど、私の精一杯出した心の中の叫びだった。

 ずっと、抑え込んでいたものだった。

 何故、それが今まで通りに抑えられなかったのかは、本当に単純で、他人からすればとても下らないものかもしれない。

 ……このまま決められた道を進めば、レイから遠く離れてしまう。

 自分から手離しておいて、あまりに自分勝手なのは私自身がよく分かっている。でも、嫌だった。

 彼の全てが、毒のように私を蝕んでいる。解毒することなんて不可能に思えるほどに。

 嵌まってしまったのだ。

 落ちてしまったのだ。

 彼の罠に。

 私を狂わせる恋に。

 冷たい風は、しかし、私の高揚して熱くなった体には無意味なものだった。

 トムとも、もう終わりだ。

 恐れていたことは、こんなにも簡単に私の元へ訪れた。何もかも、壊れた。これ以上、私は何から逃げれば良いのだろう。

 もう叶うことのない恋に、私はまた一つ涙を流していた。

 きっと、将来、何年先になっても、この日を忘れられないだろう。どんな会話を誰と交わしたのかを忘れても、どんな天気でどんな風に一日が始まったのかを忘れても、きっと、大きなばつ印のつく答えを出した、この日を。