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トム達家族を我が家に招いてのディナーは何の問題もなく、和気あいあいとしたものだった。
トムは私とレイとの事を忘れ去っているかのように以前と変わらない様子で、目が合うと優しく微笑んで楽しそうだ。
父親同士ではカレッジフットボールの話しに、母親同士ではガーデニングの話しに花が咲いている。私は時たまそちらにも目配り、相槌をうつ。
そうして、食後のデザートを終えた時だ。
「ところで、セシーリアは就職のことはどこまで決まっているのかな?」
トムの父親であるコンラッドが、彼と同じ茶色い瞳を柔らかく細めて私を見つめる。
「え……あ、まだ、何も。インターンもどこにしようか迷ってて」
突然の質問と、自分の母親からの無言の圧を感じて、少しだけ畏縮してしまう。
間違った答えは許されない。暖房が暑いわけでもないのに汗が出て、喉の奥がきゅっと締め付けられるような苦しさに、私は膝の上で手に力を込めて握る。
「へぇ! それは丁度良かった。君さえ良ければだが、私の会社にインターンとして来てくれないか?成績も優秀だし、君のような若くて綺麗な子が職場に居れば社員のやる気にもなるだろうし」
白い歯を覗かせて笑うコンラッドの隣で、妻のエイダが彼を嗜めていた。トムも苦笑いで「ごめんね」と私に謝る。
「あら、良いお話じゃない!ね、セシーリア?」
隣から聞こえた声は妙に甲高く、握り締めた手に更に力を込める。
「そうだな、こんな良い機会はそうあるわけじゃないぞ。ご好意に甘えてみたらどうだ?」
トム達家族を我が家に招いてのディナーは何の問題もなく、和気あいあいとしたものだった。
トムは私とレイとの事を忘れ去っているかのように以前と変わらない様子で、目が合うと優しく微笑んで楽しそうだ。
父親同士ではカレッジフットボールの話しに、母親同士ではガーデニングの話しに花が咲いている。私は時たまそちらにも目配り、相槌をうつ。
そうして、食後のデザートを終えた時だ。
「ところで、セシーリアは就職のことはどこまで決まっているのかな?」
トムの父親であるコンラッドが、彼と同じ茶色い瞳を柔らかく細めて私を見つめる。
「え……あ、まだ、何も。インターンもどこにしようか迷ってて」
突然の質問と、自分の母親からの無言の圧を感じて、少しだけ畏縮してしまう。
間違った答えは許されない。暖房が暑いわけでもないのに汗が出て、喉の奥がきゅっと締め付けられるような苦しさに、私は膝の上で手に力を込めて握る。
「へぇ! それは丁度良かった。君さえ良ければだが、私の会社にインターンとして来てくれないか?成績も優秀だし、君のような若くて綺麗な子が職場に居れば社員のやる気にもなるだろうし」
白い歯を覗かせて笑うコンラッドの隣で、妻のエイダが彼を嗜めていた。トムも苦笑いで「ごめんね」と私に謝る。
「あら、良いお話じゃない!ね、セシーリア?」
隣から聞こえた声は妙に甲高く、握り締めた手に更に力を込める。
「そうだな、こんな良い機会はそうあるわけじゃないぞ。ご好意に甘えてみたらどうだ?」



