レイと、会えなくなる?

 どうして……なんて分かりきった答えを聞くほど愚かではない。

 私のボーイフレンドはトムだから。

 レイは私のボーイフレンドではないから。

 いずれこうなる時が来ることは予感していたのに、レイといる時間が積み重なる内に、ずっとこの関係が続くように錯覚してしまっていた。

 私が隣に居たいと思うのは一人だけ。

 そして、私の答えは決まりきっている。

 なのに、私は重い口を開けずにいた。無駄な抵抗だって分かっている。私は結局、弱くて無力な人間だから。

 不安そうなトムを安心させようと笑ってみたつもりだったが、恐らくそれはひきつっていただろう。

 それでも、私は模範解答のような用意されていた答えを吐き出すように答える。

「もちろん、約束するわ。私にはあなただけよ」

 彼との時間はただの夢。

 冬の雪のような一瞬の。

 私は現実を選ぶ。

 消えてしまうかもしれない脆さではなく、確実で安定した関係を。

 私の選択は何一つ間違っていない……はず。だけど、込み上げてくる熱の正体は何なのか。胸を貫くような痛みは何なのか。

 私にはちっとも理解できない。

 理解したくない。

 だって、私にはトムがいるのに。

 何一つ、答えは間違っていないのに。

 思い浮かべてしまうのは、彼の事ばかり。

 この気持ちを、何にも代えがたい気持ちを、どこに追いやればいいのかも分からない私は、良い子の顔を被ったまま、トムの求めるガールフレンドを演じる。