いつも通りの朝。いつも通りの授業。すべていつも通りに流れる時間。

 だから、こうして今日という日がいつもと何ら変わりなく過ぎ、明日を迎えるものだと疑わなかった。しかし、それは唐突に覆された。

「なんだか、最近の君は別人みたいだ」

 授業が終わると大抵行く、大学から程近いカフェでトムは言った。その表情は微笑んでいるようにも見えるが、悲しんでいるようにも見える、不思議なものだった。

 私はミルクティーが入ったカップに手を伸ばしたまま動けなくなっていた。一方の彼は、一度私から視線を外してコーヒーを一口、静かに啜った。

「そんなこと……ないわ」

 この時ほどみっともない声はなかった。動揺を隠せないのを、見せつけているように見えたかもしれない。

 ドクドクと嫌な動悸。落ち着かなくてそわそわする。

「どうして、そう思うの?」

 聞かない方が良いと分かっていて、私の口はごく自然に言葉を滑り落としていた。墓穴を掘っていることにも気づかないで。

「理由を聞きたがるのは、僕に何か隠しているから? それとも単純に、僕が何を見てそう感じたのかを知りたいだけ?」

 彼の表情はちっとも変わらない。それがよけいに私を追い込める。

「今日のあなたは、なんだか取り調べをする刑事みたいね」

 会話をそらそうと茶化してみたが、トムは笑ってくれなかった。悲しみを強く滲ませた微笑を浮かべ、次に口にする言葉を逡巡するように深い呼吸を繰り返してやっとそれを私に向けた。

「セシーリア、好きな人ができたの?」