レイは気まぐれに私の部屋に来るようになった。平日はだいたい夜にやって来て、ご飯を食べて、ふらっと帰っていく。週末になると泊まっていくこともあるし、急な呼び出しとかで帰ることもある。

 私たちの奇妙なこの関係。だけど、一線を引いて距離を保っていた。

 彼が来るときは必ず連絡をくれる。きっと、レイなりの気遣いなのだと思う。

 相変わらず素っ気ない一言二言の電話。来たとしても私をからかって笑うか、彼の特等席でぐうたらと過ごすか。まるで猫を飼っているような気分だと言えば、鼻で笑われて終わり。

 そんな毎日を、なんだかんだと言いながら楽しんでいたりする今日この頃。

「セシーリア」

 夕食の後片付けをしていた私を呼ぶのは彼の日課のようなもの。私は適当に返事を返し、洗ったお皿を拭いて食器棚に戻してからソファーでくつろぐレイの元へ向かう。

「何?」

「来い」

 私の腕を掴んで引き寄せるのもいつものこと。それを私が望んでいるのをレイは知っている。

 それでも彼の膝の上に座るのは未だに慣れなくて恥ずかしがると、呆れた顔で「いい加減慣れろ」と少し強引に座らされた。

 その余裕な態度が鼻について、私だってレイをドキドキさせたくて、彼の首に両手を回して目を覗きこむ。でも私からキスはしない。ちょっとした駆け引きのつもりだったけれど……

「きゃっ!? ちょっと、レイ!」

 彼の手が胸を撫でていて、驚いた私が彼から離れる。そこにはレイの余裕な笑みがあって、顔を真っ赤にする私とはまるで正反対!

「誘ったのはセシーリアだ」

 片方の口角を上げて「そうだろ?」と首を傾げるレイ。

「……違う」

 赤くなった顔を見られないよう、彼の胸に頬を押し付けると、彼の匂いが鼻孔をくすぐった。私を落ち着かせる爽やかな匂いだ。