†
私とレイの前にはひとつのカップケーキがある。
二人とも手にあるカップケーキを食べながら、残りひとつのそれを狙ってる。
だけど、そのひとつは私の分だ。だって、6個買ってレイはもう3つ食べた。私はまだ2つ。なのに、レイはじーっと残ったカップケーキを睨み付けている。
取られまいと私が手を伸ばした、その瞬間だった。
「っ!?」
私じゃない腕が俊敏な動きを見せて、華麗なまでにカップケーキを攫っていった!
レイを見ると、美味しいのか美味しくないのか分からない無表情な顔で口をもぐもぐしていて、口についたクリームを指で掬って舐めた。
あまりの怒りに拳をつくって震える私。
コーヒーをゆったり味わう余裕なレイ。
「わ、私の…」
「ん?」
「私のカップケーキなのに!」
もうこの怒りをどこに向ければ良いのか。唇を噛んで彼を睨む。ちょっと同情させようと涙を目に溜める。
「はぁ?泣くほど…って、分かった、分かったから」
若干面倒そうにため息を吐いたレイ。一体何が分かったのだろう。この悲しみや怒りを彼が共感するとは思えない。
「そうだな…じゃあ、セシーリアの我が儘を一つ叶えてやるよ。ほら、言ってみろ」
その言い方に苛立ちを覚えたが、そこはぐっと堪えた。彼を困らせるほどの我が儘を、と思って数分考える。急かすようにカウントダウンを始めるレイに文句を言って、ある一つの我が儘を思い付いた。
「なんでも叶えてくれる?」
「叶えられるなら」
「そうね、すごく簡単なものよ」
「なんだ?」
私とレイの前にはひとつのカップケーキがある。
二人とも手にあるカップケーキを食べながら、残りひとつのそれを狙ってる。
だけど、そのひとつは私の分だ。だって、6個買ってレイはもう3つ食べた。私はまだ2つ。なのに、レイはじーっと残ったカップケーキを睨み付けている。
取られまいと私が手を伸ばした、その瞬間だった。
「っ!?」
私じゃない腕が俊敏な動きを見せて、華麗なまでにカップケーキを攫っていった!
レイを見ると、美味しいのか美味しくないのか分からない無表情な顔で口をもぐもぐしていて、口についたクリームを指で掬って舐めた。
あまりの怒りに拳をつくって震える私。
コーヒーをゆったり味わう余裕なレイ。
「わ、私の…」
「ん?」
「私のカップケーキなのに!」
もうこの怒りをどこに向ければ良いのか。唇を噛んで彼を睨む。ちょっと同情させようと涙を目に溜める。
「はぁ?泣くほど…って、分かった、分かったから」
若干面倒そうにため息を吐いたレイ。一体何が分かったのだろう。この悲しみや怒りを彼が共感するとは思えない。
「そうだな…じゃあ、セシーリアの我が儘を一つ叶えてやるよ。ほら、言ってみろ」
その言い方に苛立ちを覚えたが、そこはぐっと堪えた。彼を困らせるほどの我が儘を、と思って数分考える。急かすようにカウントダウンを始めるレイに文句を言って、ある一つの我が儘を思い付いた。
「なんでも叶えてくれる?」
「叶えられるなら」
「そうね、すごく簡単なものよ」
「なんだ?」



