課題や授業の予習に追われる学生の私とは相反して、レイは私の本棚から小説を勝手に取って読んでいる。大人って良いな…なんて思ったりしながら、ペンを走らせる。
昨日は教科書も本さえも開かなかった。多分、大学生になってから初めてのことだ。しなければならない、という強迫観念が少なからずあったからだと思う。
いつもの私なら怠けてしまったと、強い自責の念にかられていただろうけど、なぜかそんな気持ちにならない。むしろ、今まで気を張りすぎていたんだと、頑張りすぎていたんだと気づいた。
レイに目を向けると、さっき読んでいた本を台代わりにして紙に何かを描いていた。手の動きから、文字ではなく絵を描いているようだった。
「何描いてるの?」
「別に」
「レイは画家なの?」
「違う」
「じゃあ、どんな仕事してるの?」
「…学生は黙ってお勉強でもしとけ」
冷たくあしらわれ口を尖らせて黙ると、彼が顔を上げて私を見て鼻で笑う。
「女を相手にする仕事だ」
思わず絶句する私。聞かなかったことにして彼から顔を背けた。途端に、私の嫌いな不愉快極まりない笑い声が響いていた。
「あんたの想像してるのとは絶対違うからな」
口元を押さえて、可笑しそうに顔をくしゃくしゃにするレイ。恥ずかしすぎて唸る私。
「か、からかわないで教えてよ!」
「まぁ、そのうちな」
笑い疲れたとでも言うように長い息を吐いて、煩わしげに髪を掬い上げる。…もっと、笑った顔を見たいだなんて言ったら、彼はどんな表情するのか。私は好奇心を抑えて、また教科書に意識を集中させた。
昨日は教科書も本さえも開かなかった。多分、大学生になってから初めてのことだ。しなければならない、という強迫観念が少なからずあったからだと思う。
いつもの私なら怠けてしまったと、強い自責の念にかられていただろうけど、なぜかそんな気持ちにならない。むしろ、今まで気を張りすぎていたんだと、頑張りすぎていたんだと気づいた。
レイに目を向けると、さっき読んでいた本を台代わりにして紙に何かを描いていた。手の動きから、文字ではなく絵を描いているようだった。
「何描いてるの?」
「別に」
「レイは画家なの?」
「違う」
「じゃあ、どんな仕事してるの?」
「…学生は黙ってお勉強でもしとけ」
冷たくあしらわれ口を尖らせて黙ると、彼が顔を上げて私を見て鼻で笑う。
「女を相手にする仕事だ」
思わず絶句する私。聞かなかったことにして彼から顔を背けた。途端に、私の嫌いな不愉快極まりない笑い声が響いていた。
「あんたの想像してるのとは絶対違うからな」
口元を押さえて、可笑しそうに顔をくしゃくしゃにするレイ。恥ずかしすぎて唸る私。
「か、からかわないで教えてよ!」
「まぁ、そのうちな」
笑い疲れたとでも言うように長い息を吐いて、煩わしげに髪を掬い上げる。…もっと、笑った顔を見たいだなんて言ったら、彼はどんな表情するのか。私は好奇心を抑えて、また教科書に意識を集中させた。



