「……愛子さん」

「何?」

「俺達って、今どんな状況にいる感じですか?」

「どんな……って、デートじゃない?」

「でっ…………」


横で関谷が口をぱくぱくさせたまま何も言わなくなったから、「何、嫌なの?」と言ってみたら、ぶんぶんと大袈裟に首を横に振った。


「あ、愛子さんとでっ、デートなんて……っ、お、俺、今なら死んでもいいっす!!」

「迷惑だから死ぬな」

「俺まじ幸せっす! 一生愛子さんに着いて行くっす!!」

「それは勘弁して。てか、付き合ってないし。名目上デートって言ってるだけだし」

「尾行の理由づけだとしても、休日に愛子さんと一緒に出掛けられるだけで俺は幸せっす!!」

「あー、はいはい。この幸せ者」

「棒読み今日も超興奮するっす!」


勝手に悶えている関谷を尻目に、あたしは10メートルほど先にいる一組の男女の姿を捉えていた。