「てわけなんで愛子さん、来てくださいよ、明日」

「どこに?」

「俺らが試合する体育館ですよ。ここからちょっと遠いですけど」

「えー、面倒臭い」

「お願いします、愛子さんが来てくれたら俺、いつも以上に頑張るんで!」

「いや、あたしが行かなくても頑張ってよ」

「愛子さんが来てくれた方が頑張れます!」

「行ってあげたら? どうせ私達も練習休みなんだし」


七海が横から言ってくる。


「うーん、でもなあ……」

「私も行くからさ。なんなら、私車出すよ」


七海は一年生の6月にして既に車を持っている数少ないドライバーだ。


ちらりと関谷の方を見ると、目をキラキラさせて期待するような瞳をして見ている。


いやいや、期待されても。あたしが試合するわけじゃあるまいし。


でも、こんな純粋な瞳を向けられると断ることがかわいそうに思えてきた。


「わ……わかったよ。見に行くよ」


なんとなく根負けした気分になって言ったら、関谷がぱあっと笑顔になってあたしに迫ってきた。


「ほんとですか!? 俺、明日頑張ります!!」

「はいはい、頑張れ。わかったから抱き着くな。もう集合かかってるよー」


「愛子さん、明日絶対来てくださいよ!」なんて言いながら走り去って行った関谷を見て、はいはいと心の中で返事をしておいた。


全く、あいつもめげないよなあ。