「あーいーこーさーんっ!!」


今日は飛びつかれる前に腕を伸ばして関谷の顔を手の平で止めた。あたしより腕が短い関谷はバタバタと空中で腕をばたつかせている。


「今日はそうはいかないよ」

「うぐ……愛子さんのあしらい方、すげー興奮するっす!」

「ドMか」


あたし達のやり取りを見ていた七海が近寄ってきた。


「元気だねえ、関谷くん。明日から高総体でしょ? そんなんしてたら明日疲れるよ」

「あ、そっか。もうそんな時期か」

「大丈夫っすよ。むしろ、俺の活力になります!」

「この変態……」


高総体前日でもこんな調子じゃあ、明日も大丈夫だな。


関谷と出会ってから二ヶ月。高校生にとって大事な時期に入っていた。


「関谷は? 明日出るの?」

「当たり前じゃないですか。一年の時から俺以上のリベロなんてうちじゃいませんから!」

「わかってはいたけど、相変わらずすごい自信ね……」


あたしは思わずため息をつかずにはいられなかった。


まあ、理解はできるけど。