さあ、好きになりましょうか。

キスをしたらその場から離れてさっさと帰る、が頭で描いたあたしの計画だった。だって、問い詰められたらたぶん何も答えられないし。


好きと言っていいのかわからない。好きという気持ちは本当で、伝えたいと思うのに、それを口にしていいのかわからない。特にこの男の前では。


それがあたしをこんなへたれにしてしまった。


曖昧な態度しか取れない。


だからさっさと帰りたかった。


なのに、今の状況は完全に想定外。


「ひどいですね、愛子さん」


いつのまにかあたしは壁に体と腕を壁に押し付けられていた。そのあたしを関谷が下から鋭い目でじっと見上げる。


あ、この目、さっきも見た。まっすぐで大人びて、どこか色気も含んでいる目。


「そんなことされたら、俺勘違いしちゃいますよ」


腕を掴む関谷の手の力がこもる。


「腕、痛い……」

「俺、待つとは言いましたけど、愛子さんにこんなことされて我慢できるとは言ってません」


関谷が空いている方の手であたしの頬を包んだ。


しばらく見つめ合っていると、関谷のまっすぐな瞳に吸い込まれそうになって、視線を逸らした。


その途端、関谷があたしの唇を塞いだ。