ランウェイの裏には
これまたレベルの高い女装男子が
そこらじゅうにいた。


意外と男が女の格好すると
人によっては不思議な魅力が出るもんだ
と俺は思った。




私が周りに気を取られて無言でいると、


「あれー?お嬢、どうされました?今日はえらく静かですね。」



おどけた口調で私に話しかけてきた。



「先輩、いつまでそれ続けるんですか.....。止めてくださいよ...。」




すると先輩は口を尖らせて言った。


「えー残念。面白かったのに....」



とその時、女装大会司会者が
幕開けのあいさつを始めた。


「みなさん、本日は歴史ある女装大会を見に来てくださり、ありがとうございます!......」


一気に緊張が走る裏方。



うう!こんなの苦手。
私は胃の辺りがムカムカする感じがしてきた。


隣の先輩は....?
ちらっと横目で朱雀先輩を確認すると、


大口あけてアクビしてる....。

どんだけ緊張感無いんだよ。




「さあて、エントリーNo.1番のカップルはこの方たちです、どうぞ!」




ワァァァーー!
という歓声が上がる。



表の舞台を除くと、
ライトアップされた
カップル.....(男2名だけど)が客に向かって手を振っていた。



緊張してきた......!
どうしよう!


私が焦って青ざめていると、


「谷田君?」

と朱雀先輩が私の顔を覗き込んできた。


「具合悪い?それとも緊張してるの?」



私の顔を覗き込む、突然の先輩どアップに
鼓動が早鐘を打つみたいに早まった。


「あぁ、はい、ちょっと.....」

私は目を反らして言った。




先輩は顔が近い。
近すぎる!



先輩は距離感が分からないのか!?




「大丈夫だよ、谷田!俺がエスコートしてあげるから!」





そういって、先輩は間近でイケメンスマイルを炸裂させた。



きゃー!やめてよ!
それは反則だってー!


「あっあっ....大丈夫、です!」


あぁもう!
頭かくらくらするなぁ、なんだか...


それにエスコートって、何するつもりかな?先輩。


「あははー!谷田、頑張ろうな!」


ハッハッハ、と豪快に笑う先輩。
こんな嬉しそうな先輩は初めて見るなぁ。




てか、マジで気分悪くなってきた。
どうしよ。
呼吸も、心なしか苦しいような気がする。


でも、今日はこんなに先輩が笑顔でいられる日なんだから。


気分を害しちゃ悪いよね。



私はなんとしてもこのイベントを成功させなくては.....!



そして、私たちが呼ばれた。

「お次はエントリーNo.14のお二方!どうぞ!」



朱雀先輩がいった。


「谷田、行くよ!」


私は観客を見ながら半ばひきつった顔で言った。


「はい......」


「んじゃ、手。」



「はい....?と言われますと?」
はあぁあ?という顔で先輩は私を見た。


「繋ぐんだよ!ほら、貸せ」



言い終わるや否や、先輩は強引に私の手を取った。




「よし、行こう!」


私はちょっと赤くなってる顔を見られたくなくて。

極力下をみて応えた



「はい....」

そして、私たちはライトアップされたランウェイへ踏み出し手を繋いでた。