「それ、俺のなんだろ」
「えっ?」
思わずお菓子を引っ込めそうになった時、大翔君が右手を私に伸ばしてくる。
「他の奴からは貰ってないから。
俺のために作ってくれたんだろ」
他の子からは貰ってない?
たったそれだけなのに、そのことがすごく嬉しくて、勝手に頬が緩む。
「貰って、くれるの?」
「まりやが作ってくれたものを他の奴に渡すなんてあり得ないから」
大翔君は、いつも私が欲しい言葉をくれる。
ひと言でどれだけ私を嬉しくさせてるか、きっと気付いてない。
遠慮がちに大翔君の手のひらにお菓子の入った包みを乗せると、嬉しそうに目を細める。
「たぶん上手にできてる……と思う」
自信なさげに言う私の目の前で、ラッピングのリボンを解いて、プレーン味のマドレーヌを1つ掴むと、そのままパクッと食べてしまった。
ドキドキしながらその光景を見守ってると、口に入ったマドレーヌを飲み込んでから大翔君が私に目を合わせる。

