「だから、あの人と一緒にいたお前を見て驚いた。
本当にまりやに何もなくてよかったよ」
私の手を握っていた大翔君は、グッと力を入れると自分の方へ引っ張る。
体が傾いてビックリした私をしっかりと抱き留めると、大翔君の膝の上に座らされて、横抱きにされた。
「ひ、大翔君……っ」
焦る私を楽しそうに見つめながら、握ったままの私の手に柔らかい大翔君の唇が触れる。
「あ、あの……! もう夕飯の準備しなきゃ」
どういう反応を返したらいいのか戸惑って、こんなことしか言葉が出てこない。
大翔君に触られるのは、ドキドキするけど心地よくて。
でも、私が慣れてないせいか、いつもどうしていいのかわからなくなる。
何を言ったら喜んでくれるのかもわからないし、可愛いことでも言えたらいいけど、それもできないし。
こんなんじゃ、すぐに呆れられて捨てられちゃうんじゃ……?
ひとりで余計なことを考えていた私を少し上目使い気味に見た大翔君は、今度は私の指と自分の指を絡めて遊び始めた。
「夕飯なんてまだ早いだろ。
その前にあの先輩が触れたところ、消毒しないとな」

