麻生先輩と別れたあと、教室に鞄を取りに行って、大翔君に手を引かれてそのまま帰宅した。
「あの先輩と何話してた?」
家に帰るまで、ほとんど話さなかった大翔君がリビングに入るなり聞いてきた。
「何って、大翔君を探してたらぶつかっちゃって、転びそうになったのを助けてもらっただけだよ」
「他には? あいつに何もされなかった?」
どうしてこんなことを聞いてくるんだろうと思いながら、黙って頷くと
「はー……。よかった」
一気に体の力が抜けたみたいに、ドサッとソファに体を預けた大翔君。
そんなに心配させてしまったのかと、ひとりで内心不安になってると、ソファの近くにいた私の手を握ってきた。
「あの麻生って先輩、女にはかなり手が早いって、うちの学校じゃ有名な人なんだよ。
光と似たようなタイプの人だけど、彼氏がいる女にまで平気で手を出すって聞いたことあるから、光よりも面倒な人だ。
前にお前と同じだろってあいつに言ったら『あんな磁石みたいに女の子を吸い寄せるヤツと一緒にするな』って怒られたから、覚えてたんだよ」
来るもの拒まずどころか、自分から行くタイプでもあるってこと?
そういうタイプの男の人に慣れてない私は、大翔君から話を聞いただけでちょっとだけ怖くなった。

