「何だよ。言えないような映画観るつもりだったのか?」
ニヤリと笑う大翔君に、ブンブン首を横に振って全否定。
「ち、違うよ。……あの、笑わない?」
「笑うかどうかは内容次第だな」
余計に言い辛い……。
でも、見栄張って他の映画観たって面白くもないし、どうしよう。
言おうかどうしようか迷ってると、大翔君は受付とは逆の方へ私の手を引いたまま歩いていく。
不思議に思って見ていると、慣れた様子で上映チケットを発券する機械を操作していく。
あっという間に手元に2枚のチケットを受け取り、私を見た大翔君はニッと笑った。
「観たい映画決まってんのに、並ぶなんて時間がもったいないだろ」
そう言って、チケットの1枚を私に渡してくれた。
何気なくチケットに目を落とすと、そこには……。
「これ……っ!」
「まりやが観たかった映画ってこれだろ? びっくりした?」
声も出せずにコクコクとただ頷くだけの私に、大翔君は嬉しそうに笑っていた。

