体が倒れていかないように、再度肩にしっかりと腕を回すと、まりやのふっくらとした小さな唇が微かに動く。
「……ひろ……くん……っ」
寝言だとわかっていても、自分の名前を呼ばれれば、一瞬ドキッとする。
「どんな夢見てんだよ……」
可愛らしい寝言に、ひとり笑いながら無防備に眠るまりやの頬に、空いてる方の手を添える。
「寝てる時まで、俺を誘惑するなよ……まりや」
何度触れても、吸い付くような肌の感触に手のひらを滑らせながら、いい香りを放つ髪にひとつキスを落とす。
起こさないように顎に手を添えると、顔を少しだけ傾けて柔らかい唇を味わうように、深めにキスをする。
すぐに唇を離して、間近でまりやを見つめるけど、全然起きる気配がなくて、ホッとしたような、残念なような複雑な気持ちになる。
まりやを腕に抱いたまま、もう一度夏のデート特集を組んでる雑誌に目を落とす。
誘ったら、お前は喜んでくれるかな。
眠ってるまりやを見ながら、喜ぶ顔を思い浮かべてみた。

