「仕方ないから行ってやるよ」



俺の答えに光と米倉は「ウェーイ!」と言いながらハイタッチして喜ぶ。



「その代わり、俺は1曲も歌わねーぞ」



「えぇ!? カラオケ行くのに1曲も歌わないって、松っちゃん本当に若者?


実は歳ごまかしたりしてない?」



米倉の失礼な質問に、やっぱ行くのやめようかなと考え始める。



「大翔君は歌がすごく上手なんだよ! ね、そうだよね宮内君」



「そうなんだよ!! 米ちゃんも聞いたら驚くよ。これはマジで」



なんで、まりやが俺のことなのにこんな嬉しそうに言ってんだよ。



しかも、俺の歌なんて聞いたことないのに。



「だから、1曲だけでいいから歌ってくれるよね?」



盛り上がりながら前を歩く光と米倉には聞こえない声で、俺にお願いしてくるまりや。



こいつが俺にこうしてお願いしてくるなんてあんまないことだし。



「わかったよ。1曲だけな。

まりやのために歌ってやる」



俺が嫌だと言わないことをわかってたようなまりやは、嬉しそうに顔を綻ばせていた。