「えっ。まさかのシカト!? それ酷くない!?
だってこんなに雨降ってんだよ!? そんな中を濡れて帰れって言うの?
オレが濡れて風邪でもひいたらどうしてくれんの!?」
「安心しろよ。何とかは風邪をひかないってよく言うだろ。
じゃ、そういうことで」
騒ぎだした光を置いて帰ろうとした俺の腕を必死に掴んで引き止めてくる。
「ちょちょちょ!
いやぁ、いくら大翔でもそれはないでしょ〜。
ボク達の仲じゃないか」
「男なら潔く走って帰れ。
お前とあいあい傘なんて死んでもごめんだ」
「オレとのあいあい傘が嫌って、して帰りたいって子は沢山いるのに、その大役を大翔君に譲ってあげようというのに、少しは有難いと思ってよ」
「だったらその大役を有難く降りてやるから、目当ての奴と仲良くあいあい傘して帰れよ」
生徒玄関口でやいのやいのと言い合っていると、光にビニール傘を差し出す奴が現れる。
それに淡い期待をした光が振り向くと、
「お困りならオレが特別に入れてあげようか」
とニッコリ笑う麻生先輩が傘を持って立っていた。
傘を差し出してくれたのが女だと思って疑わなかった光の顔がショックすぎて固まったまま動かなくなった。
それが可笑しくて、つい鼻で笑ってしまう。
「よかったな。
入れてくれる優し〜い先輩がいて」
固まる光に小声で囁くと、声には出さないけど「ヒ〜ロ〜ト〜」と口パクで、恨みを込めた声が聞こえてきた。

