「オレのハニーって言えないのが、物すごく残念なんだけどって、俺の耳にはハッキリ聞こえたけど。
こんなハッキリ聞こえるのが空耳だとはな」
「バッチリ聞こえてるじゃん。
聞こえないフリするとか、それってオレにイジられたいっていう願望の表れ?」
パチンとウインクを大翔君に送って、なぜかお色気たっぷりの宮内君。
それを冷やかな目で見る大翔君。
「お前は根っからの変態だな。
言っとくけど、俺にそんな趣味ないから」
この会話はここで終わりとでも言うように、大翔君は教室に入ってくる時に宮内君を横目に見て、
クラスメイトのみんなに囲まれてる私の手を取って、いとも簡単にその輪の中から救い出してくれる。
まるでUFOキャッチャーの中で埋もれてる、欲しいたった1つのぬいぐるみを見つけるみたいに物すごく簡単に。
いつもは騒ぐクラスメイト達も、その大翔君の素早い行動に言葉を失っていた。
「ありがとう」
静かに席に着く大翔君に、小さな声でお礼を言うと、頬杖をついて見上げられ、
学校ではあまり見せない、私だけにはよく見せてくれるようになった優しい微笑みを向けてくれた。
それを見ていた女子たちが小さく歓喜の声をあげたのに、私だけ恥ずかしくなってしまった。

