「それは……」
「あんたのせいで、あいつ本気で恋愛できなくなったの知ってる?」
「え?」
言いよどんだ篠原は、俺が言ったことに目を丸くしていた。
「トラウマを作った原因のあんたに会いたくないっていう光の気持ちは、当然だと思うけど。
俺があいつの立場なら、同じ気持ちだと思うし。
脈がないってわかってんのに、光に執着するのやめた方がいいんじゃない」
ハッキリと言った俺に、麻生先輩が引きつり笑いを浮かべてるのが見えたけど、そんなことは気にしない。
どうせ『女の子にはもっと優しく』とか、光と同じこと言いそうだし。
俺が言ったことに言葉を失っている篠原の横を通り過ぎて、帰り道を歩く。
そんな俺の後ろを篠原のことを気にしながら、ついてくる麻生先輩。
「そんなに心配なら、麻生先輩が声かけたらどうですか」
背後にいる先輩に声をかけると、珍しく歯切れが悪い返事を返してきた。
「いやぁ~……。ちょっとの間見てて思ったけど、オレ女の子なら結構誰でもイケるんだけどさ。
あの子はちょっと無理っぽいかなぁ」
来るもの拒ます去るもの追わずで有名なこの人でも、無理だって思う女がいるなんて、そっちの方が俺は驚いた。
さっきは、仲良さそうに盛り上がってたのに。
そういえば、米倉も嫌いなタイプだって言ってたし、麻生先輩も何か感じるものがあるのか。
「先輩でも無理な相手っているんですね」
「う~ん。基本的には大丈夫なんだけど、オレの本能が危険を知らせるっていうのかな」
「はぁ。よくわかりませんけど、なんで先輩はさっきから俺のあとついてきてるんですか」

