「ねぇ、あの磁石センパイなんで毎日来てるの?」



「知らねーよ。

俺だって迷惑してんだ」



麻生先輩のあの変な宣言から数日。



あれから宣言どおり、あの先輩は毎日放課になると3年の教室から俺達の教室へとわざわざやってくるようになった。



そんな不可解な行動を繰り返す麻生先輩のことが嫌いな光は、あの人が現れるたびにムスッとした顔を見せる。



「こんなに毎日来るなんて、このクラスにお目当ての誰かがいるってこと?」



米倉と話していたまりやの元に迷うことなくたどり着いた先輩は、必要以上に顔を近付けて話しかけている。



毎回来るだけでもムカついてんのに、あんなに顔近付けて何してんだよ、あの先輩。



まりやを見ながらイライラしてる俺に、光は見てるだけで何も言ってこない。



代わりに、



「なぁ、何だよあのチャラい先輩。

この間から1組の教室に来ると、いっつもいんじゃん! しかも、まりやに話しかけて。

おい、ヒロ! あのチャラい先輩まりや狙いじゃないの?」



まりやと麻生先輩の方に気が向いていた俺は、祥吾がグイッと肩を引っ張るまでこいつの存在に気付かなった。



「あ? ああ……お前いたんだ」



「はぁ!? いたんだじゃねーよ!

ヒロあの状態見ておかしいと思わないの!?

俺は、あんなチャラい先輩を近付けさせるためにお前とまりやを取り合ったわけじゃないっての」



耳元で喚く祥吾の声は入ってくるけど、俺の意識は片時もまりやから離れない。



本気の恋愛教えてほしいとか、訳わかんねーこと言い出して、何考えてんだあの先輩……。