頭を下げて謝った私は、優しく手が触れる感触がして頭を上げる。
「お前が謝る必要ないだろ。
予測不可能な行動してきたのはあっちだし、まりやは悪くない。
それより、ひとりにさせてごめんな。怖かっただろ」
私の隣に座っていた大翔君は、怒るどころか私の心配をして気遣ってくれる。
「怒ってないの?」
「あいつには怒ってるけど、まりやに怒るわけないだろ。
あの先輩に何もされなかったか?」
何もされなかったと頷くと、よかったの意味を込めて頭を優しく撫でてくれた。
それだけで、もっと安心感に満たされる。
どうして大翔君だとこんなに安心できるんだろう。
私の気持ちをいつもわかってくれて、いつも欲しい時に欲しい言葉をくれる。
「これからはもっと気を付ける。
大翔君が言ったみたいに、必要以上に話さないようにするから」
「そうしてほしいけど、あの人かなり粘りが強そうだからな。
なんてたって磁石らしいし」
冗談を交えて私を笑わせようとしてくれる大翔君に、消えかけていた不安が再び胸の中で芽生えようとしていた。

