「なに、あれ……。
ヒロ君以外受け付けられないから、あきらめて下さいって……。
ぷっ……! あははは! あ、あんな断られ方したの生まれて初めてなんだけどっ!」
ひとり置き去りにされた麻生は、まりやが去ったあとでお腹を抱えて大笑いし始める。
「ははっ。あんなにハッキリとヒロ君のこと好きって言えちゃうなんて、純粋だよねぇ。
暇つぶしでからかってやろうと思ってただけなのに、マジで興味湧いてきちゃったじゃん。
藤沢まりやちゃん。ヒロ君のハートを射止めた女の子。
本気になんて絶対にならないけど、あの子は面白いな」
来た道を戻り、駅の方へ向かいながらクスクスと肩を揺らして笑っていた。
――バタン!
「はぁはぁ……っ」
肩で息を吐きながら、玄関ドアを力いっぱい閉める。
追ってきてなかったよね?
麻生先輩にあんなこと言っちゃって、怒って追いかけてくるかと思って必死に走ってきたけど。
不安を抱えながら、ドクンドクンと速く脈を打つ胸に手を添えると、とりあえず気持ちを落ち着かせる。
「まりや、お帰り」
先に家に着いていた大翔君が2階から下りてきた。
大翔君の姿を目にした途端に、膝がガクンと折れて体の力が一気に抜けて、玄関に座り込んでしまった。

