ドクドクうるさく音を放つ心臓の音と大翔君の言葉が頭の中をリピートする中、私の唇が自然と動き始める。
「女の子にはかなり手が早いって、学校じゃ有名な人……」
「え? どうしたの?」
「彼氏がいる女の子にも平気で手を出す……」
「まりやちゃん?」
ブツブツと独り言のように言葉を並べた私に、キョトンとした麻生先輩は、もっと私との距離を詰めようとしてきた。
今になって、危機感が襲ってくるなんて。
私の態度に戸惑っている麻生先輩の気が緩んでる隙に、掴まれていた腕を振り払って離してもらう。
「私、大翔君以外は受け付けられないので、あきらめて下さい!
何を言われても、他の人なんて好きになれないし、大翔君じゃなきゃダメなんです。
だから、ごめんなさい!」
息をめいっぱい吸い込んで、一息にそう言い切ると呆然としてる麻生先輩を置き去りにして、力いっぱい家に向かって走りだした。
おかしなこと言ってないよね?
自分の気持ち、ちゃんと伝えただけ。
嘘は言ってないもん。
言い逃げした私は、その後の麻生先輩がどうしていたのかなんて知らない。

