桜はすでに散り始めて、葉桜にはまだ早いこの季節。
温かいようで少し肌寒い日。

あたしは、近所の市立中学に入学した。





「おねーちゃんっ!起きて!」



どたどた・・・
足音が聞こえた気がした。

…多分、“気がした”だけやし。


「お姉ちゃん!」


どんどん・・・
やけに力強い扉を叩く音が聞こえる。
……ん、聞こえ…??


「うるさいぞー、そぅた」


布団の中から注意を投げかけてみる。


「起こしに来たったんやん!起きよ!」


がちゃ
あ、ドアが…開いた。

眠気が取れず、朦朧としたまま身体を起こす。



「何?朝ぁ?」

「朝ちゃうかったら起こしに来うへんわ!」


それもそうや。
目を擦って、しっかり目を開ける。


「おはよぉ、そぅた」

「おはよう」


挨拶を交わしたら、さっさと弟は立ち去って行く。
……年頃??

なんでもいいわ。
早よ準備しな……。


時計の針はチクタクと止まる気配は見せない。

…止まっても困るけど。



あたしは手早く身支度を済ませて、一階へ降りた。