「紗南、降りるぞ」

信号で止まると兄は私の手を引っ張り、車から降りた。

「お前ともあの女とも今日限りだ」

兄は鋭い目で男を睨むと、バン!と乱暴にドアを閉めた。

日差しが熱い。

ミンミンとどこかで蝉が鳴いている。

車は、そのままどこかへ走り去っていった。

兄は天を仰いだ。

「暑いな、くそ」