高校時代は、そんな和音と何とか接点を持ちたいと、音楽の道に進もうとした。

やはりバイオリンだろうと思って天神学園音楽教師のバルナ・スフィアに指導を仰ぎ、『鳥肌が立ちます』と評した鋸のような音色を奏でて、バルナの記憶に残る生徒の一人となった。

所詮奏多は庶民の出。

バイオリンなどという高尚な楽器は向いていなかったのだ。

ならば。

ここは一つ軽音部に入部してはどうだろう。

色々アレな感じで流行していた事だし。

だが悲しいかな、バイオリンに続き、ギターもベースも、彼女にはセンスがなかった。

爪弾く楽器爪弾く楽器、聞く者に鳥肌を立たせてしまう。

そんな奏多についた綽名は『耳なし芳一』。

女子生徒につける綽名ではない。