やっとの思いで依頼書の形まで仕上げることが出来た。時間にして小一時間。これを警察はいつもこなしている。感謝しようと思えた。

「じゃあまずは、どこから手をつけるか」

「はいはいはい!だったらまずこれでしょ!?誘拐事件!」

やっぱりCSPの本業は誘拐された子供の、逆誘拐。それをしてこそが我CSPではないだろうか。

「わかったよ、そうだろうと思ってたしな」

やっさんは呆れながら、俺が担当して作った誘拐事件の依頼書を取った。

場所は、千葉の曰く付きと専らの噂のたった幽霊アパート。ターゲットは原野奈々。年齢7。それ以外の状況は把握できていない。

「ここまで完璧なもんだと、相当手強いんじゃないっすか?」

「穴は必ずある。それに、多宇さんもいるだろう。まずは、ここに行くしかないだろ」

依頼書まで作り上げたそれを、無造作に鞄の中へ放り込み、出るぞ、と勇ましい程の威勢をやっさんは見せた。