さて、実務的なことは、海外旅行に対しなんの知識もない我が家より、親戚がアメリカに住んでいる彼女の家庭のほうが頼りになる。
 結局、Kちゃんのお母さんが、ツアーの手配を済ませてくれた。

 わたしたち子どもは、
「自分でパスポートだけ取りに行っといで」
 と、パスポートセンターに導かれただけである。

 ツアー料金は12万円。
 高校生になってすでにアルバイトを始めていたわたしは、まさか、あのアメリカに、自分が稼いだバイト代で行けるなどとも思っていなかったので、これまた驚愕である。
 
 さて、滞在先は、もちろん、外交官家庭であるから、ワシントンD.Cである。
 せっかくならニューヨークやカリフォルニアに行きたい、などといった我がままな感情など、もちろん生まれるべくもない。アメリカという国に、どんな街が存在するのか、皆目見当もついていない。

「ワシントンD.C」という、テレビで聞いたことがあるけれど自分とは宇宙の果てほども縁遠いと感じていた街の名前を聞けただけで、テンションは上がりっぱなしである。