梢「あたしは、このことを、別に言いふらそうなんてよこしまな気持ちはこれっぽっちも持ち合わせとらんから、安心してな。
……ただ、……あんさんの目ぇは、孤独やった。
怯えとった人の目ぇをしとった。」
この人は。
梢「変化の波は、必ず来る。」
梢姉さんは、穏やかな顔で、あたしを見つめる。
その綺麗な瞳に、吸い込まれるように、あたしは魅せられる。
そして、梢姉さんは続ける。
……大きかったり、小さかったり……その時々やけど。
でも、大きかろうが小さかろうが、変わっていくんです。
それは、簡単に受け入れられることとおます。
……悲しいことや。
でもね、お嬢はん、悪いことばかりじゃないんどすえ?
神様の気まぐれは、いつも気の向くまま。
それはそれは辛ろぉて、悲しゅうて……。
せやけどな、お嬢はん。
その分、その時その時が大切に思えますんよ?
人間、辛い時ほど見る花は、何故か、とても綺麗に見えますの。
神様は、気まぐれやけど、ちゃんとご褒美を忘れてはいなかったみたいでしてね。
……残酷やけど……素敵や思いまへん?
不意に、あたしは外を見た。
今日も快晴。いい天気。
それは、時代が変わろうが、決して変わることがない。
ああ。
この人は、あたしの欲しい言葉を、欲しいときに言ってくれる。
固く閉ざしていたあたしの心の扉に、一筋の光が届いた気がした。
変わらない。変わらないものは、目の前にちゃんとあるじゃないか。
変わったのはあたし。
人との関わりを絶ってしまったあたしは、気づくことができなかった。
変わらないものがあることを、忘れてしまっていた。
にこっと笑うと、梢さんはパンッ!と手を叩いて立ち上がった。
部屋に子気味いい音が広がる。
梢「さぁ、こない可愛らしい姿になって!まるで天女や!はよう皆さんに見せてあげなもったいないでぇ?!」
さぁさぁ!と、梢さんに背中をおされた
あたしは立ち止まり、振り返った
志乃「また……来てもいい?」
梢さんは、にやりと笑って
梢「もちろん。……来ないと逆にあたしが押しかけるわよ?」
見覚えのある笑い方
あたしは少しだけ、微笑んでみせた


