そうやって、あたしは自分を守ってきたんだ。
梢「……そない思い詰めんとって?」
梢姉さんは、あたしを抱きしめた。
梢「……心細かったやろなぁ……。……怖くなかった?寂しくなかった?」
何もかも、お見通し、と言ったように。
梢姉さんの言葉は、すんなりと、あたしの心に染み渡るんだ。
ついこの間、この時代に飛ばされたあたし。
それは、今でも信じ難い、受け入れることが難しい事実。
変化は突然訪れるものだって頭の中に入れていたけど、まさかこんな変化があるなんて。
それでも、これは事実。
ほんとのところ、あたしは怖かったのだ。
知らない世界、知らない人達、身に覚えのない疑い、拷問、視線……
すべてのものからシャットアウトするために、あたしは怖いという感情を自然と押し殺した。
怖い、と。
その単語が頭に閃くだけで、奈落の底に落ちていくような、どこまでも果てしない恐怖に、呑み込まれてしまいそうで。
だから、平気を装った。
感情を殺す。
それこそが一番の術であり、自分を傷つけることなく守ることができる。
ずっと小さい頃から、誰に教えられるでもなく、身につけた御業。
その技はあたしに深く染み付き、考えるよりも先に、感情を抑えることができた時
あたしはもう、弱虫ではなくなった。


