志ーこころー 【前編】─完─




そうやって、あたしは自分を守ってきたんだ。










梢「……そない思い詰めんとって?」




梢姉さんは、あたしを抱きしめた。




梢「……心細かったやろなぁ……。……怖くなかった?寂しくなかった?」





何もかも、お見通し、と言ったように。




梢姉さんの言葉は、すんなりと、あたしの心に染み渡るんだ。





ついこの間、この時代に飛ばされたあたし。




それは、今でも信じ難い、受け入れることが難しい事実。






変化は突然訪れるものだって頭の中に入れていたけど、まさかこんな変化があるなんて。




それでも、これは事実。








ほんとのところ、あたしは怖かったのだ。




知らない世界、知らない人達、身に覚えのない疑い、拷問、視線……




すべてのものからシャットアウトするために、あたしは怖いという感情を自然と押し殺した。




怖い、と。


その単語が頭に閃くだけで、奈落の底に落ちていくような、どこまでも果てしない恐怖に、呑み込まれてしまいそうで。





だから、平気を装った。









感情を殺す。




それこそが一番の術であり、自分を傷つけることなく守ることができる。



ずっと小さい頃から、誰に教えられるでもなく、身につけた御業。





その技はあたしに深く染み付き、考えるよりも先に、感情を抑えることができた時


あたしはもう、弱虫ではなくなった。