志ーこころー 【前編】─完─



近藤さんは、ほんとうに彼女を巻きこむつもりでいるのだろうか。





そんなこと……







………………させない。










今ならまだ間に合うはずだ。




血にまみれた人間には、血で血を洗うことしか、残された道はない。










たった一突きで、これまで進んでいた、
あるいは進めたであろう命がとまる。





それはあまりにも儚すぎて、あっという間で……。



















刀は使いたくないと言った志乃。






自分たちの持っているそれは、魂であり、誇りでもある。








武士の魂とうたわれるのは、沢山の命を奪うから─。




自分が殺めた者と共に生きる。




だからこそ武士は、刀を自らの魂だと言う。








沖田「私は、もう戻るには遅すぎます。」











見上げた空は、どこまでも蒼く─。





しかし、自分達には見上げる資格など、ない。




立ち止まる事は、許されない。







だから






だからせめて、私達のようにはならないで。




自ら殺めた亡霊達は、一生、まとわりつくのです。




虚ろな目で。



狂気に歪んだ目で。




憎しみの目で。





悲しみの目で。





哀れみの目で。












沖田「今なら、まだ……」














見上げることを許されないと分かってはいても、私は、立ち止まってしまう。









どうしようもなくて。









こんなどう仕様もない自分にも、希望とか、未来とか、夢と言われるものを、信じてしまう。




持ってしまう。




それが、残された人々の使命で。






人の性(さが)で。














志乃さん。



あなたは、私達の希望になりつつあるのですよ。












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