志ーこころー 【前編】─完─



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梢「………………………………」





志乃「……………………………………」





さっきから、一言も声を発さない梢姉さん。




しかも、穴があくんじゃないかってくらい、ガン見されているあたし。





変な汗が体中に走る。





でも、そんな沈黙に耐えきれなくなったあたしは、口を開いた。






志乃「……………………………………あのぉ〜……」




梢「…………なんて綺麗なんやろ…………」













梢さんがうっとりとしたように言った。

















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梢「お嬢はん、組の皆さんが大好きなら、普段出来ひんことで恩返ししなはれ!!」





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とまぁ、梢姉さんにそそのかされて……








梢「……ため息しかでぇへんわぁ〜……」



志乃「……は、はぁ……」






着物を着せられ、髪の毛を結われ、化粧をされて……





志乃「(……嘘臭い〜……)」




梢姉さんとは対照的に、あたしはしらけた視線を送る。








梢「あたしの目に狂いはなかった!」




きっぱりと言い切った梢姉さんは、胸をはって鼻息荒く、どや顔をしている。





志乃「そ、そんなことは……」







梢「お嬢はん!」






あたしの両頬を、梢姉さんが包んだ。





梢「いきなりやけどな。


あんさん、時渡りしたやろ?」









その口ぶりは、さも当然かのように。



そしてあたしが”時渡りをした”前提で。







あたしは、梢姉さんを凝視した。