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梢「………………………………」
志乃「……………………………………」
さっきから、一言も声を発さない梢姉さん。
しかも、穴があくんじゃないかってくらい、ガン見されているあたし。
変な汗が体中に走る。
でも、そんな沈黙に耐えきれなくなったあたしは、口を開いた。
志乃「……………………………………あのぉ〜……」
梢「…………なんて綺麗なんやろ…………」
梢さんがうっとりとしたように言った。
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梢「お嬢はん、組の皆さんが大好きなら、普段出来ひんことで恩返ししなはれ!!」
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とまぁ、梢姉さんにそそのかされて……
梢「……ため息しかでぇへんわぁ〜……」
志乃「……は、はぁ……」
着物を着せられ、髪の毛を結われ、化粧をされて……
志乃「(……嘘臭い〜……)」
梢姉さんとは対照的に、あたしはしらけた視線を送る。
梢「あたしの目に狂いはなかった!」
きっぱりと言い切った梢姉さんは、胸をはって鼻息荒く、どや顔をしている。
志乃「そ、そんなことは……」
梢「お嬢はん!」
あたしの両頬を、梢姉さんが包んだ。
梢「いきなりやけどな。
あんさん、時渡りしたやろ?」
その口ぶりは、さも当然かのように。
そしてあたしが”時渡りをした”前提で。
あたしは、梢姉さんを凝視した。


