剣道の稽古の帰り道


もう真っ暗な道を防具と竹刀をかついでとぼとぼと歩いていた



足には楽に履けるピンクのクロックス。




激しい稽古の後だから、大量の汗が夜風にさらされて、すこし肌寒かった。



志乃「(帰りたくない……)」



帰りたくない帰りたくない帰りたくない……



なんのために今日1日外をほっつき歩いてたんだろ〜


でもやっぱり自分の帰る場所はここしかなくて……



見上げた古いアパート


誰もいない、あたしと大家さん以外は。



と、くるりと我が家に背を向けて、元来た道を歩き出した。





自分でもわからなかった

でも足が……自分の足が勝手に動くのだ



気味が悪いのになぜか怖いと思わないのが不思議なところ。



あたしは……



志乃「呼ばれてる……?」



そうか、と妙に納得

















ーーーーー志乃「するかっ!!!!」



バシバシと自分の足を叩く



志乃「おい!こら!ばかちんが!


なにあたしの意思関係なく動いてんだよっ!!」




しーん……








もう一度バシバシ叩く



志乃「……わかった!わかったから!



あたしは帰りたいんだっ!疲れたから寝た


い!そんでパピコ食べるんだっ!だから


おとなしく家に行きやがr……!」



急に、足が棒のように止まった。



志乃「???」




自由になった足をさすっていると




「……志乃…」




…………誰?

まさかと思うけど……



これって心霊現象?!



ヤダヤダ!!志乃ちゃんおばけ嫌いよっ!!



生まれてこの方心霊番組とか見てないし!




ーーーーー志乃。


……この声……




もしかして……?



顔をあげると昼間のアンティークショップ、そして、光る本。





あっと思ったときには既に意識を手放していた。