志ーこころー 【前編】─完─



日に焼けて浅黒い肌は、今日の太陽の下(もと)、よく映えていた










もしかして












ほれ!といって、その男はあたしの手の中に何かを置いた









「それはのぉ、わしがさっきこぉてきた店に置いてあったんじゃ。詫びじゃ!受け取ってくれ!」







あたしの手の中には小さな鈴がついた匂い袋が転がっていた






─チリン







その鈴の音は、あたしの頭の中の細胞がクラグラと音を立てている様で







あたしの細胞すべてがフル活動する







記憶の奔流で脳がきしむ








土佐……





土佐……






薩長同盟……
















坂本龍馬……










志乃「坂本……龍馬……?」












あたしの視界から消えようとしていた男は、あたしの声に気づいたのか、踵を返して言った










「おまん、わしを知っちょるんか?」
















のちに、この人物こそがこの激動の時代に終止符を打つ













「そうぜよ。わしが坂本龍馬ぜよ」











そう言って、坂本は屈託の無い笑顔をあたしに向けた













よく晴れた5月の、昼下がりのことだった