日に焼けて浅黒い肌は、今日の太陽の下(もと)、よく映えていた
もしかして
ほれ!といって、その男はあたしの手の中に何かを置いた
「それはのぉ、わしがさっきこぉてきた店に置いてあったんじゃ。詫びじゃ!受け取ってくれ!」
あたしの手の中には小さな鈴がついた匂い袋が転がっていた
─チリン
その鈴の音は、あたしの頭の中の細胞がクラグラと音を立てている様で
あたしの細胞すべてがフル活動する
記憶の奔流で脳がきしむ
土佐……
土佐……
薩長同盟……
坂本龍馬……
志乃「坂本……龍馬……?」
あたしの視界から消えようとしていた男は、あたしの声に気づいたのか、踵を返して言った
「おまん、わしを知っちょるんか?」
のちに、この人物こそがこの激動の時代に終止符を打つ
「そうぜよ。わしが坂本龍馬ぜよ」
そう言って、坂本は屈託の無い笑顔をあたしに向けた
よく晴れた5月の、昼下がりのことだった


