そう思うと、心做しか気持ちが明るくなった
あたしは大好きな京の街を歩く
みんながみんな着物を着ている……
もう慣れたとはいえなんだか浮世離れしたその光景に、あたしは時々なにが現実でなにが夢なのか分からなくなる恐怖に煽られる時がある
ここは現実……?
じゃああたしのいた世界は偽物……?
そんな思いがふつふつと後から後から沸き上がってくるのだ
-でも
この景色を見ている時、あたしが居るこの世界は、確かに本物だと、安心感のあるものに変わる
あたしは見渡す
甘味処、床屋、走る飛脚、野良猫、ずらりと並ぶ屋台
泣きじゃくる子供に、それをなだめる母親の声
この電子機器や工業製品のない時代へ飛ばされたけれど、此処には人情がある
笑い声や泣き声。それもバラバラだけれど
あたしの時代にはないものばかりで……


