『そんな!ええんどすよ。いつ来るかも分からへんし』 青葉は小さく手を振った。 『一緒に待ってる方が、早く時間が経つように感じるよ』 男の子はにっこりと笑った。 『僕、宗次朗っていうんだ。君は?』 宗次朗は青葉に尋ねる。 『青葉どす』 青葉もおずおずと答えた。 『青葉ちゃんか。良い名前だね』 名前を褒められたのは初めてだった。 京の男には、名前を呼ばれることすらなかった。 『おおきに』 青葉はまた、小さく礼を言った。