__バンッ




急ぎ過ぎて、ドアがすごい音を立てた。


「も、持ってきました…!」



今日こそは、認めてもらえるはず…



「遅い。」



なんて思いも、この人の一言で全て消し去られる。



「ご、ごめんなさ「焼きそばパンが食べたい」



私の言葉は、この人によってさえぎられて……って




「…へ?」



焼きそばパン…?



「で、でも…コッペパンとメロンパンって、」



「3分で行ってこいって、言ったよな…?
俺はあの時にコッペパンが食べたかったんだ。
今は食べたくない。ほら、さっさと行ってこい」



「え、ええ…っ」



この人の名前は、矢口恭弥。
同い年の男の子。



私の、好きな人…




そして、見てわかるように、私はこの人の



パシリ…です。



「口答え?いい度胸してるな。
はい、腹筋20回。やれ。」



「なっ?!なんで腹筋なんですか!?」



「お前、筋肉全然ないじゃん。
へろへろしてて見ててうざいの、
早くやって焼きそばパン買ってこいよ」



毎回、言うことがむちゃくちゃ。



でも、私はちゃんと知ってる。



「はい…でも、このメロンパンとコッペパンは…?」



「あ?お前にやるよ。
俺は食べたくないし。」




ほんとはすごく優しい人だってこと…



「でもお金、矢口くんのだし…」



「うるさい、いいから焼きそばパン買ってこいよ
昼休み終わるだろ」



「はい!ごめんなさい!」



あと、



「…メロンパンといちごみるく、置いてけ。」



見かけによらず、甘い物が大好きってことも。



「うん、ここに置いてくね」



思わず笑ってしまう。



「てめぇ…
笑ったから腹筋15回プラス」



「ひっ…ごめんなさい …」



「早く行ってこいって!!」



「はいっ!!」





逃げるように、階段を降りながら思う。



私がコッペパン好きって言ったの覚えててくれたのかなって。




そんなわけないけど



そうだったらいいなって。