SIDE 僕
「約束をしよう、いつか君のもとに必ず迎えにいくと。今はまだできないけど、そのときは君を強く抱き締めるから」
「………………………………」
彼は愛しそうに僕の頬をなで
そっと囁いた。
でも、僕にはその言葉だけで充分だった。
彼とのこの世界が僕の現実(ホントウ)
なら、どれほどよかったか。
でもここは違う。
ここはウタカタの夢(ウソ)。
僕の現実の世界は酷くつまらない。
執着したいものも愛する人も
なにもない無の世界。
「僕は君に愛される意味が理解できない。僕にはなにもない。それなのにどうして」
愛される理由なんてなにもない
こんなにつまらない僕、
それは誰よりも僕が理解している。
「君が君だから好きなんだ。愛なんて言うのは無条件のものなんだ。想いだけは純粋なものなんだから」
「……僕はあとどれくらい待てばいい?」
彼は少し苦笑いで僕に触れる。
「もう少しだよ。君の涙をぬぐえるまでもう少し。もう一人で枕を濡らさないでいい。声をあげて泣いていい。全てうけいれるから。」
ふいに涙が溢れだす。
誰にも気づかれないように
隠していた涙が止まらない。
「僕は幸せになれるの?」
「うん。君の呪縛を解き放つ。だから今はどうか笑って。泣き顔の君をまだ抱き締めることができないから。」
彼はすごくつらそうに私の涙をぬぐう
しかし、その手はすりぬけてしまう。
「待ってる、どんなに苦しい世界でも待つから。だから…………」
言葉につまる愛することを
信じていいのか、
弱虫な自分と決別できない
「うん、絶対に迎えにいく。だから信じて」