そして暫く経つと、大量の食べ物と飲み物が運ばれてきた。
それぞれグラスを手に持つ。
私は淡いピンク色のカクテルを渡されて、夏穂はオレンジ色のカクテルだ。
ちなみに男陣は全員ビール。
「「「かんぱーいっ!!」」」
ガチャンと勢いよく合わせられるそのビールを見てお父さんのことを思い出し、嫌な感情も飲み込むように液体を喉に通した。
「おぉ、美海ちゃんイクねー!もっと飲んで飲んで!」
それからは、進められるがまま。
別に想像していたほど苦くなくて甘くて飲みやすいし、飲めば飲むほどフワフワした感覚が押し寄せてきて、今日あったことを忘れれそうでよかった。
本当は、父の言葉にそれなりに傷ついていたのだ。
父には私だけを見てほしかったのだ。
「ちょっと、美海?大丈夫?飲み過ぎじゃない?」
夏穂の言葉も耳に入らない。
「んぅー。いいのっ。お酒美味しくて好きーぃ」
呂律がうまく回らない。
でもそんなこと大した問題ではない。
「やばい、美海ちゃんめちゃくちゃ可愛いね。ほんっと美人。初めて見たときびっくりしたよ」
「ふふ、和くぅん。ありがとっ」
「あのさ……この後抜け出さない?」
「えぇ?」
席を私の目の前の開いた席に移動し、机の上に身を乗り出して話している和くんと私。
ただ笑っていると、不意に和くんが視線を上げた。
「おぉ、一斗!お前おせぇよ」
……イチ卜?
不思議に思って顔を上げた。
そこには……見覚えのある顔。
思わず、ガタリと立ち上がった。
でもふらついて倒れ込みそうになってしまうけど……ぐっと、暖かな腕に支えられた。
「み、み…?お前なんでこんなところに?」
紛れもなく、この声は一斗だ。
姉の彼氏で、私の元家庭教師の“先生”。
私の、好きだった人。
姉に、奪われた人。
「いーちーとぉっ!」
思わず一斗に抱きついた。
「……え、……は?2人って知り合い…?」
和くんの声が聞こえるものの、ぎゅうっと抱きついている手に力を込める。
懐かしい匂いがした。
「これ合コンだよな?……まじかよ。和、こいつどれだけ酒飲んだ?」
「……は?あー、結構飲んでたけど…」
「………ありえねーって。おい。おい、美海」
「いーちとっ!」
一斗の温もりが嬉しくて、むふふと顔がにやける。
「……お前も何酔ってんの。てか何で合コンで酒なんか……」
はぁ、と一斗が吐いたため息。
どきり、と胸が嫌に跳ねた。
「一斗……?」
一斗から離れて一斗の顔を見てみると、まゆにシワを寄せていて。
嫌われた、と思った。
「いちとっ。ごめんなさい、もう悪いことしないからっ」
必死で一斗の服の裾を引っ張る。
そして、ぎゅっとまた一斗の腰に抱きついた。
「一斗だけは、嫌いになんないでっ!」
ふと、何も考えられない頭にお母さんとお父さんが浮かんだ。
「お姉ちゃんよりもいい子にするからぁ……」
私は、酔った頭でただ一斗に懇願した。
あなただけは。
あなただけは、私を見捨てないで。
あなただけは、私を怒って。
理性を失っている私は、何もストッパーが効かない。


