「せんせっ。おはよっ」
教室に入って、教壇に立っている先生に一番に挨拶。
「“おはよう”じゃなくて“こんにちは”」
「そんないけ好かない先生、今日も超かっこいいねぇっ」
「教師を口説く前に遅刻をしない!」
「やだ。先生口説いてから一日が始まるもーん」
眉を寄せているにも関わらず、完璧な容姿をしている先生。
現代版の生きる王子様だ。茶色のさらさらとした髪に、甘いマスク。あぁもう素敵ムリ本当に素敵かっこいい。
眉を下げている先生にケラケラと笑って、“ちゅっ”と投げキッスをした。
「コラ!ふざけない!」
「どう?ときめいた!?」
「俺は教師で、今は授業中!!!!!」
大声で叫んだ先生。
「え、トキメイたって?禁断の恋始めちゃう!?禁断の恋とか燃えない!?」
「……いい加減席に着きなさいーーーーーーー!」
いつも通りの先生との会話。
授業中、しかも4時間目に登校してきた私は周りなんて気にせず先生に突っかかる。
そしてクラスメイトは微笑ましく、生暖かい目で見守ってくれている。
時折どっと笑いも起こる。
眉間をピクピクと震えさせている先生にクルッと背を向け、様々な表情をしているクラスメイトと向い合った。
「先生、私のものだから盗らないでね!」
グッと親指を立てれば、後ろから先生にその指を折り曲げられた。
「だーれがモノだ!」
「痛ぁっ!…骨折れた!」
「なら保健室行っておいで」
「あ、てか先生、今私の手触ってくれたね!」
「………………………」
「でも骨折れちゃったから、慰謝料のかわりにちゅーしてっ」
「……よーし、邪魔が入ったが授業再開するぞー」
「やー!無視しないでっ」
それでも先生は本格的に私に構わず授業を始めた。


