「はぁ…」
短いため息をついて席に着くと、斜め前の机にカバンを置いた結舞ちゃんが、眉をハの字に下げて言った。
「もぉ~っ!心陽ってばまぁたそんな冷めた顔して!」
「仕方ないでしょ~!私は……」
そう言いかけると、途端に始まる、きゃっきゃとうるさい声。
はぁ…。
怒られまいと声には出さないけど、心の中ではまた深いため息。
「ほんーと、荘くんの人気も絶大だよねぇ。ま、社交的で明るくて、あの3人の中でも一番話しかけやすい感じするし、いつも人に囲まれてるのはそのせいだよね!」
「ふーん…」
結舞ちゃんはあくまで長男推しだからか、あんまり一条荘に対しては興奮してないみたいだけど。
「なんでもいいけど、せめて他所でやって欲しいものだな…」
「んもう、心陽は相変わらずなんだから!」
だってそうでしょう?
それに、私にはあの屈託のない笑顔も、本当はどこか闇を帯びてるようにやっぱり見える。
皆、気づかないけれど。
