「…それじゃあ、ね」
そうして、いつものように私の家の前に着くと立ち止まって別れを告げる。
…まだ、さよならしたくないな……。
そんな私の願いが届いたのか。
「…あ、ちょっと待て」
彼の右手が私が離れるのを許さなかった。
触れているところから、彼の温もりが伝わる。
…こうやって触れるのなんて、すごく久しぶりで。
私は自然に顔が熱くなるを感じた。
「……な、何?」
嬉しいような、恥ずかしいような。
そんな気持ちを必死に隠しながら、私は彼に問う。
すると、彼は私の瞳をじっと見て、こう答えた。
…その瞬間、彼の私の手を握る力がより強くなった気がした。
「……俺の部屋、来いよ」

