ボクは鼻歌混じりに天歌を見上げ、

『もう一回、聞きたいみたいだよ』

天歌は、心底嫌そうにコエを飛ばした。

『その方を、お世話するように』と。

『丁重に、が抜けてるよ』

ボクが指摘すると、

『丁重におもてなしするように』

天歌が付け加えた。

「どうしてですか?」

紗良奈が社を見つめ、問いただすように言った。

もはや目は閉じられていない。

答えを探すように見開いている。

『そうすれば、そなたの願いは叶うであろう』

天歌が締めくくるように呟いた。

そして――

紗良奈がボクを見る。

「なんだって? 弁財天様の声は聞けたのかい?」

頭の後ろに手を組んで聞いてみる。

「よくわからないけど――」

彼女は俯いて呟いた。

「あなたをうちに連れて帰るしかなさそうね」