それがいけなかったのだろうか。

彼女が一目散に駆け出した。

追いかけようと走り出すけれど、走り慣れていないせいか足がうまく動かない。

すぐに彼女を見失ってしまった。

「おやおや、逃げられてしまいましたねぇ」

傍(かたわ)らに降りてきた天歌が、笑いをかみ殺しながら言う。

けれど僕に睨まれて、その笑みを引っ込めた。

「大丈夫、明日になればまたあの娘は来ますから」