神様の憂鬱

そして、彼女は言った。

「わたしは許されないことをしたの」と。

「許されないこと?」

ボクが繰り返すと、彼女が大きく頷いた。

「わたしは許されないことをしました。許される範囲を超えてしまったの」

その声には、まるで温度が感じられなかった。

氷のように冷たく、真っ暗な闇を連想させられた。

「だから、あの人を探してください。

そしてわたしに会わせてください。

今度は、わたしがあの人を幸せにしなくてはいけない」

「それが、きみの望みなのかい?」

紗良奈が頷く。

「でも、もしかしたら彼はもういないかもしれない。

繊細で心の弱い人だったから、死んでしまっているかもしれない」

「そのときはどうするんだい?」

「彼を生き返らせて」

「それは、無理だ。できることとできないことがある」

「なら――」

紗良奈が呟いた。

その表情には、微笑みがある。

「もし、あの人が死んでしまっていたら――

――わたしも殺してください。

それがわたしの願いです」