紗良奈は、神妙な顔で逃げる機会をうかがっているようだ。

チラチラとボクに目配せを送ってきている。

けどさぁ、ボクには逃げる気なんてさらさらないわけで。

この無礼な人間の男二人にどんな罰を与えようか考えているだけで精一杯というか。

でも、あれだな。

ここで力を使ってもいいのかなぁ。

天歌との約束もあるわけで。

ただ、これは自衛の一種になるわけだし、

紗良奈に使うわけじゃないから約束を破ることにはならないし。

なんて、頭の中で考えを巡らせていると、

「もう、おまえいいよ。殴んないでやるからどけ。消えろよ!」

男がボクの横を素通りしようとする。

紗良奈の腕を掴んだままで。