「どうしたの?」

「どうしたって――」

しわがれた声で叫んで、途中で咳き込んだ。

ゲホッ、ゴホッと、苦しそうに胸を押さえている。

「大丈夫?」

彼女が大きく首を振った。

少し絡まった黒髪が、顔に当たりそうになり慌てて身を引いた。

「ここで、なにをしてるの?」

喉を押さえて彼女が言った。

「なんにも?」

「なんにもじゃなくて!」

怒ったように顔をゆがめ、

「いいから、出て行ってよ!」

扉を指差した。

「なんで怒ってるの?」

ボクはきょとんとして聞いてみる。

けど――

「出て行って!」

かなり興奮しているようだ。