「なぁ、愛してるよ。」 耳元で囁くように言って、ナイフをもっと差し込む。 声にならないくらい痛い。 タバコを押し付けられるのとは違う、痛み。 涙がこぼれた。 「じんっ。」 思わず、仁の名前が口からこぼれた。 助けて、仁。 「来るはずな「由奈!」 私の名前を呼ぶ声が聞こえた。 痛みからじゃなくて、安心からより涙が出て行く。 ここだよ、仁。 雄也さんは舌打ちをしながら、立ち上がる。 「くそっ、」 仁の姿が見えると、雄也さんは走って逃げて行く。 私は肩を押さえながら、立ち上がった。